■『ハンセン病療養所』壷中庵書房■


2003/02/22 (Sat)
昼過ぎにTVのチャンネルをまわしてたら NHK教育に知ってる人が出演し、 ぺらぺらとしゃべってたのでびっくりΣ( ̄▽ ̄ノ)ノ 何かと思ったら 伝統芸能鑑賞講座の講師になってるのでした〜〜 そんなの聞いてないよぉ状態( ̄▽ ̄; ・・・以上の話は、 タイトルとはまったく無関係であります。 でも、 こっちも知ってる人が書いた本ですな。 『ハンセン病療養所』  冬敏之著 壷中庵書房発行 2381円  http://www.esbooks.co.jp/product/keyword/keyword?accd=30848947  (↑近所のセブンイレブンで受け取れるので送料無料♪在庫残りわずか) 実はこれ、1年も前に購入して そのまま本棚の飾りになってたんですが、 最近、この本をMの会S隊のN子さんに貸す約束をしてしまったので さっさと読んじゃわないといけません。 いやそれより、 買ったまま1年も読んでないなんてバレたら、 書いた本人、 「gepinちゃんはまだ読んでなかったのくわぁぁぁ〜〜!!(怒)」と 恨んで夢枕に立ちかねません(^^; というわけで、今日はついに、 計10編ほどの短編集になってるこの本のうちの 最初の4編を読みました〜
高原の療養所にて
 33歳?で療養所を出て社会復帰した主人公が、ハンセン病患者特有のくの字に曲がった自分の手を手術するため、1年ぶりに療養所に舞い戻った時の物語。療養所で患者が産んだ子供を処分する話とか、療養所内で主人公が目撃した首吊りの話とか、なかなかに衝撃的な内容でした。
 それにしてもこの本、小説ってことは創作なんだと思うんですが、読んでるとどうしても本人の半生記みたいな気がしてしまいましたよ。・・・・そういうわけじゃないのかしら?>冬さん

埋もれる日々
 主人公が小学校2年生で発病したその前後の物語。同じ病気の末期症状ですでに歩けなくなっている父親が、熱を出して寝込んでる息子を見舞うため、毎日2階まで階段を這いずって昇って来るのが印象的でした。そして、そんなけなげな父親に対して嫌悪感しか抱けないこの少年は・・・やっぱり冬さんなんじゃないのかね? 年齢の計算は合わないけどさ。

父の死
 上記の父親が療養所で亡くなった時の物語。小学2年の主人公は参列者もまばらなその葬儀を見て「自分も父と同様、醜く寂しく死んでいくのだ」と考えていたのですが、もしこの主人公が冬さんであるなら、実際にはまったくそんなことにはならなかったのでした。結局ハンセン病は治ったし、癌で亡くなる直前にはこの本がどこぞの文学賞を受賞したため、そのお祝いのお花やら祝電やらに囲まれて、なんともまぁ実に華やかな病室でしたよ。お葬式もホンッットに盛大で、新聞記者の取材まで来てたしな。

その年の夏
 終戦直前、主人公が小学5年だった時の物語。ハンセン病の療養所というのは、ハンセン病の患者さんだけがいる場所かと思ってたら、そうでもなかったんですね。両親が病気になってほかに身寄りの無かった子供は、仕方無いから一緒に療養所に入れられてたんだそうです。
 主人公と同じ年頃でいつも一緒に遊んでた3人の仲間たちはみんな病気ではなかったため、主人公よりもずっと早くに療養所を出て行ってしまいました。そんな仲間たちと別れる時に、主人公がまた子供心に、「自分だけがここで一生を終えなければならないのだ」と考えているのが、とてもかわいそうに思いました。

以上が今日読んだ分なんですが、 6編めに土田さんのことという作品があって、 この本を全部読んだ人は、みんな口を揃えて 「土田さんのことは、面白かった!!」と言います。 なので、明日かあさってには、 この作品がどんなもんなのかを読んでみましょう♪ ちなみにこれ書いた冬さんって、 うちの父親ととっても仲良しこよしの人だったので 私が小さい頃から何度もうちの実家に泊まりに来ては 朝御飯を一緒に食べてました。 小説家だけあって、 いろいろ面白い話を聞かせてくれたし、 ちょっとわがままなところがあってそこがとっても楽しかったのですが、 私が小学1年生くらいの時、 朝、冬さんの泊まってる部屋に行ったら、 冬さんが一生懸命、 体中に軟膏のようなものを塗ったり 足の包帯を巻き替えたり 錠剤を何粒も飲んだりしてました。 その時初めて私は、 「??。・・・冬さんって、病気なのかなぁ?」と思ったんですが、 実を言うとあまり興味も湧かなかったので それについて本人に尋ねることもなく、 それ以上のことは何も知らずに、何年も経ちました。 で、私が高校生くらいの時に らい病がハンセン病という名前に変わりまして、 この時初めて「冬さんはハンセン病だった」という話を 多分夕食の際中に、 うちの両親や祖母の雑談で知ったのでした。 その後、 隔離政策やその他いろいろそれにかかわる様々な話を 新聞で読んだりTVで見たりしたのですが、 TVで見るハンセン病患者さんと、実際に会う冬さんとは、 なかなか私の頭の中で、一致しませんね〜。 何しろ、 あの朝体中に軟膏を塗っていた姿以外、 冬さんは、 どこにでもいるただのおっさんにしか見えなかったので(失礼)。 まぁよくよく考えれば、 冬さんが時折若い頃を思い出しては 私らに愚痴ってたムチャクチャな話って、 全部、療養所内の話だったんですよねぇ〜 それにこの本を読んで、 くの字に曲がった自分の手をこんなに気にしていたんだなぁ、 ということを、初めて知りました。 これにはなんだかちょっと申し訳なくなったり。 でも 子供の頃の私が冬さんの病気にほとんど気付いていなかったという話を 以前、冬さんの奥さんとした時に 「月灯ぃちゃんのそういう分け隔てないところがいいのよ♪」って 誉められたので (誉められることなのかどうかいまいち疑問も残るけど)、 それはそれで、まぁいっか。 昨年、冬さんが亡くなって、 もう2度と会えないんだなぁ、と思った時には 時間の流れとは悲しいものだと考えましたけれど、 この本読んで、 ハンセン病の患者さんたちがこんな隔離病棟に入れられることもまた もう2度と無いのだなぁ、 と考えれば、 時間の流れも捨てたモンじゃないような気が だんだんしてきましたね。 以上、 今日読んだ本の感想などでした♪